学生時代から一貫しているのは、「まだ経験してないことを経験したい」という思い。単純作業的な仕事は性に合わず、就職にあたって重視したことは「若手でも即戦力として活躍できるかどうか」でした。新卒ではマスコミ業界を選び、紙からデジタルへの変革期の中で早くから成果を出し、数年後にはチームを率いていました。
リクルートへ転職後は、一貫して事業企画・事業開発に従事し、数々の事業を立ち上げました。その中で、東南アジアなど海外で働いた経験が、私に起業家への道を歩ませることになりました。海外の人々の仕事ぶりを見ているうちに日本のビジネスマンとの大きなギャップを感じ「このまま日本企業で働きたくない」「自分の力を試してみたい」と感じたのです。
海外では自分の意志や考えで行動し、自分の稼ぎには自ら責任を持つのが当たり前。一方、日本を振り返ってみると、会社の指示で行動していれば会社が給料を払ってくれるという意識が一般的。自分のやりたいことや自分の資産、将来設計は、他人に左右されることなく自分で決めたい、そう思うようになりました。
リクルートでの海外時代、様々な企業の研究を行っていた2010年前後に出会ったのが、今でいうSaaS。当時はまだ用語や定義も一般的ではなかったこのビジネスに、私は大きな可能性を感じ、「これこそ自分が起業すべきビジネス」と確信しました。
私がSaaSに感じた魅力は「お客様起点」であること。SaaSはユーザーに価値を認められ、継続的に使ってもらってはじめて成長する、いわばサステナブルなビジネスです。これまで主流であった売り切り型のビジネスに魅力を感じず、「もっとお客様と継続的なリレーションを紡いでいくことはできないものか」と考えていた私にとってはまさに理想的なビジネスでした。
その後、自ら会社を設立してSaaS製品を開発。数年後には、そこで得られた経験・ノウハウを活かしてSaaS専門のコンサルティング会社を立ち上げました。今では、SaaSを世の中に浸透させ、SaaS業界を発展させることが私のライフワークと言えるまでになりました。
SaaS専門コンサルタントとして数多くのSaaS製品を見てきた私ですが、ベーシックで「formrun」に出会った時は非常に衝撃を覚えました。サイトに馴染みやすく、簡単にフォームが作れて、スピーディーに顧客対応が可能。チームでの使いやすさ、UIの分かりやすさなど、「formrun」には、まさにPLG(※)としての適性を強く感じました。
このビジネスモデルは、セールス部門に支えられるいわゆるSLG(※)に比べて、より製品を利用する顧客への理解を深め、業務フローの解像度を高め続け、プロダクトを改善し続けることが事業成長の鍵となります。かねてより日本製のSaaSでPLGを実現したいと思っていた私は、代表の秋山に「この事業を僕に育てさせてほしい」と訴えました。
こうして、CSO(最高戦略責任者)と兼務でformrunの事業部長となった私は、「formrun」をPLGとして育てるべく、サービスと組織の両面から改革を推進することになりました。意欲あふれる能動的なメンバーたちとともに、formrunをご利用いただいている累計10万超のユーザーの利用動向データを徹底的に解析し、ユーザーの満足度向上に向けて機能や価格の見直しを繰り返しており、日々大きなやりがいと充実感を感じています。
※PLG……「Product-Led Growth」の略。「製品主導の成長」のことであり、製品が直接顧客に価値を伝えて購入を促す戦略。
※SLG...「Sales-Led Growth」の略。「セールス主導の成長」のことであり、セールスが製品の価値を伝えて購入を促す戦略。
現在のベーシックは、創業当初の比較メディアを主力とした会社から、それら事業を売却してSaaSを軸とした会社へと変革しつつあり、まさに過渡期にあります。あえて苦言を呈すると、過渡期の会社にありがちなように、組織や人が過去のPL経営手法を引きずりがちなところはまだあります。これからは経営管理も事業管理もよりSaaS企業であることをベースに行っていくべきであり、その実現もCSOとしての私がまさに責任を持って行うことだと認識しています。
SaaSはユーザー起点のビジネス。SaaS企業であるからには「顧客第一主義」が求められます。事業の成長とともに組織のルールも変化し、製品も増えていくとは思いますが、SaaSをやり続けるからには、その中心に顧客第一主義を置き続けなければ組織としての軸がブレかねません。
顧客第一主義の徹底は、口で言うほど容易なものではありません。しかし、ベーシックには創業以来の「何事にも本気で取り組む」文化があります。フラットな組織のもと、熱意を持ったメンバーが本気で取り組めば、決してできないことではありません。その上で、顧客第一主義を徹底していることをしっかりと発信し、外部にも届けていくことが大切だと思っています。
仕事において重視していることは、物事を相対的に見ること。これも原点は海外経験にあります。1カ国に駐在せず、複数の国を巡回して各市場の調査をすることで、それぞれの地域の特徴を理解することを行っていました。
相対的に見るためには比較すべき対象が必要なので、一つのことだけをやっていてはダメ。日本では「一所懸命」という言葉があるように、一つの所で一つの仕事に打ち込むことがある意味美徳とされるところもありますが、私は二足や三足のわらじを履いているからこそ見えてくるものがあると考えます。言い換えると、「そこでしか通用しないものを磨いても仕方ない」とも思っており、どこででも通用する人間であるためにも、常に相対軸を持つようにしています。
これは仕事に限らず、人生においても同様。今も東京と福岡の2拠点で活動しているように、どこかに偏らないよう意識しています。多様性が重視されるこれからの時代、何かを絶対視するのでなく、常に相対視することを大切にしていきたいと考えています。
企業から求職者へのメッセージでは、よく「この会社なら成長できる」と言われます。これを「努力しなくても自然に成長できる」と誤解しないでほしいと思っています。会社は成長を支援したり、成長を促進できるよう環境を整えたりはしますが、実際に成長できるかどうかは自分次第です。
では、どうすれば成長できるか。これには様々な要素がありますが、私が重視するのは、カオスを楽しめるかどうか。過渡期にあるベーシックはカオスに満ちています。そのカオスを楽しみ、その解決のために構造化できるような人を心よりお待ちしています!